目次
2024年度の人事院勧告では、国家公務員の給与について、民間給与との較差是正を目的に月例給を平均2.76%(約1万1,183円)引き上げ、一時金(期末・勤勉手当)を0.10月分引き上げることが勧告されました。
また、初任給や若年層の俸給月額の大幅引き上げ、扶養手当の見直し等、給与体系全体のアップデートが提案されました。
月例給の引き上げ幅は33年ぶりの高水準となり、民間賃金動向を反映した賃上げが中心となっています。人事院勧告は法的拘束力がないものの、慣例として給与改定に反映されます。
俸給表の改定と遡及実施
国家公務員等の給与改定に当たっては、人事院勧告に基づく俸給表の改定を令和6年4月1日(2024年4月1日)に遡って実施することが慣例となっています。
これは、年度内に賃金水準の引き上げを反映させるためで、俸給表の月例給や一時金の増額が年度の初めに遡及して反映される仕組みです。
国立大学においても国家公務員給与との均衡を図る際、遡及実施の時期が重要な判断基準となり、予算確保や法人の財政状況を踏まえた対応時期の設定が課題となっています。
国立大学法人における人事院勧告の位置づけ
国立大学法人は国家公務員ではなく、独立した法人格を持つものの、給与制度の設計や俸給表の水準決定において人事院勧告を重要な参考資料として扱うことが一般的です。
多くの法人では、教職員の採用・定着・処遇改善の観点から、国家公務員給与との均衡性に配慮しつつ勧告内容を踏まえた俸給表改定を実施しています。
ただし、法人ごとの財務基盤や運営費交付金の状況によっては、人事院勧告通りに給与改定が実施できないケースもあります。
そのため、各大学では経営協議会や役員会の審議を経て、勧告内容をどの程度反映するか判断するプロセスが設けられています。
人勧準拠が困難な大学
近年、国立大学法人を取り巻く環境は、 運営費交付金の下げ止まり・物価上昇・財政悪化 といった構造的な制約が強まっています。
運営費交付金の基盤的経費に十分な伸びがないことや、電力料金・研究資材費等の高騰によって教育研究費が圧迫される状況が続いています。
こうした背景から、必ずしもすべての国立大学が2024年度の人事院勧告による賃上げに完全準拠できるとは限らず、遡及実施を見送ったり、一部のみの反映にとどめる法人も見られます。
結果として、大学ごとの対応時期や賃上げ幅には差異が生まれており、教職員側と法人側の間で交渉が継続しているケースもあります。
2024年度人勧対応状況まとめ
以下の表では、国立大学法人の人事院勧告への準拠状況・俸給表改定時期を一覧化しています。
対応状況は各法人の公開資料や教職員組合資料等に基づき記載していますが、確認できなかった法人については不明としています。
まとめ
2024年度の人事院勧告では、国家公務員の給与水準について大幅な引き上げが示され、国立大学法人においても多くの大学がこの勧告を踏まえた給与改定を実施しました。とくに初任給や若年層を中心とした俸給表の見直しは、大学教職員の処遇改善という観点から一定の前進といえます。
一方で、国立大学を取り巻く財政環境は依然として厳しく、運営費交付金の伸び悩みや物価高騰の影響により、すべての大学が人事院勧告どおりの対応を行える状況にはありません。その結果、俸給表の改定時期が年度途中にずれ込む大学も見られます。
さらに、2025年度の人事院勧告では、2024年度を上回る水準の賃上げが勧告されており、国立大学法人にとっては一層厳しい対応が求められる見通しです。今後は、運営費交付金の動向や国の財政措置の在り方が、各大学の給与制度にどのような影響を及ぼすのかが重要な注目点となります。
