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国家公務員の給与は「安い」「薄給」といったイメージを持たれがちですが、実際はどうなのでしょうか?
本記事では、人事院が公表する「国家公務員給与等実態調査(令和3年)」をもとに、国家一般職(高卒区分)職員の年収モデルを、勤務地別(本省/出先機関)に詳しく比較・解説します。
また、俸給(基本給)に加えて、地域手当・住居手当・扶養手当・通勤手当・残業代・ボーナスまで含めた実質の手取り年収イメージを算出。転職や就職活動の参考にご活用ください。
国家公務員の給与制度とは?
国家公務員の基本給は「行政職俸給表(一)」に基づき支給されます。その他、勤務地や家族構成などに応じて支給される各種手当があります。
地方公務員は「地方公務員給与実態調査」や「地方公共団体給与情報等公表システム」、独立行政法人職員や国立大学職員は「役職員の給与水準等の公表」で情報公開されています。
一方、国家公務員では「国家総合職」と「国家一般職」の区別が明確にされていないデータも多く、特に高卒区分(主に国家一般職)に絞った分析は貴重です。
高卒区分(行政職俸給表(一))の平均俸給(月額)
経験年数 | 年齢目安 | 平均俸給(月額) |
---|---|---|
1年未満 | 18〜19歳 | 154,152円 |
2年未満 | 19〜20歳 | 159,331円 |
3年未満 | 20〜21歳 | 163,745円 |
5年未満 | 21〜23歳 | 175,106円 |
7年未満 | 23〜25歳 | 192,296円 |
10年未満 | 25〜28歳 | 208,466円 |
15年未満 | 28〜33歳 | 242,879円 |
20年未満 | 33〜38歳 | 283,685円 |
25年未満 | 38〜43歳 | 324,699円 |
30年未満 | 43〜48歳 | 360,543円 |
35年未満 | 48〜53歳 | 380,632円 |
35年以上 | 53歳以上 | 393,653円 |
※この表は扶養手当や残業代を除いた基本給の平均額を示します。
支給される主な手当
手当名 | 内容 | 支給額例 |
---|---|---|
地域手当 | 物価や民間給与の高い地域に勤務する場合 | 最大20%(東京都) |
扶養手当 | 配偶者6,500円、子ども1人あたり10,000円 | |
住居手当 | 賃貸に居住している場合:上限28,000円/月 | |
通勤手当 | 公共交通機関や自動車通勤:上限55,000円/月 | |
時間外手当 | 所定外労働に対して基本給等の1.25倍を支給 | |
本府省業務調整手当 | 霞が関勤務の係員〜課長補佐に支給(7,200〜37,400円) | |
期末・勤勉手当 | いわゆるボーナス。年2回で基本給の4.5ヶ月分相当 |
【モデルケース①】本省勤務(霞が関)の場合
- 採用:高校卒業後すぐ
- 勤務地:東京都(地域手当20%)
- 配偶者と子1人を扶養
- 家賃80,000円の賃貸に居住(住居手当支給)
- 通勤手当:年間10万円
- 残業:月平均40時間
- 昇進:33歳で係長、43歳で課長補佐
→ 年齢別・役職別の年収モデル(例)
年齢 | 役職 | 年収(概算) |
---|---|---|
18〜19歳 | 係員 | 約418万円 |
28〜33歳 | 係員 | 約670万円 |
38〜43歳 | 係長 | 約886万円 |
53歳以上 | 課長補佐 | 約1,075万円 |
【モデルケース②】出先機関勤務(さいたま新都心)
- 地域手当15%
- 家賃70,000円の賃貸(住居手当支給)
- 通勤手当:年間8万円
- 残業:月平均15時間
- 昇進ありだが、本府省業務調整手当なし
→ 年収例:
年齢 | 役職 | 年収(概算) |
---|---|---|
28〜33歳 | 係員 | 約567万円 |
38〜43歳 | 係長 | 約738万円 |
53歳以上 | 課長補佐 | 約877万円 |
【モデルケース③】出先機関勤務(京都市)
- 地域手当10%
- 家賃70,000円の賃貸
- 残業:月平均10時間
- 通勤手当:年間8万円
- 本府省業務調整手当:なし
→ 年収例:
年齢 | 役職 | 年収(概算) |
---|---|---|
28〜33歳 | 係員 | 約532万円 |
38〜43歳 | 係長 | 約692万円 |
53歳以上 | 課長補佐 | 約821万円 |
年収の計算式(モデル共通)
(俸給+地域手当+扶養手当+住居手当+残業代)×12か月+ボーナス+通勤手当(俸給 + 地域手当 + 扶養手当 + 住居手当 + 残業代) × 12か月 + ボーナス + 通勤手当
まとめ:国家一般職は本当に「薄給」なのか?
本省勤務であれば30歳で670万円、40歳で880万円、50歳で1,000万円を超える年収も現実的です。出先機関の場合はそれより100〜200万円程度低くなりますが、それでも民間企業の平均を上回るケースが多く見られます。
残業代や地域手当、本府省業務調整手当などが加わることで、「薄給」というイメージとは異なる現実が見えてくるはずです。
関連リンク・参考資料
- 人事院「国家公務員の給与」
- 人事院「国家公務員給与等実態調査」
- 内閣官房「国家公務員の給与制度」
※本記事は公表資料に基づき作成しておりますが、個人ごとの実際の年収とは異なる場合があります。あくまでモデルケースとして参考にご利用ください。