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人事院勧告とは何なのか?具体的な流れを解説

人事院勧告とは

人事院勧告(じんじいんかんこく)とは、誤解を恐れずに簡単に言うと「公務員の給与に大きな影響を及ぼすアドバイス」です。あくまで「アドバイス」なので無視することもできますが、その特別性などから、アドバイスの内容どおりに決定することがほとんどです。

以下、もう少し丁寧に補足します。

国家公務員の給料や勤務条件は法律で定められていますが、景気は日々変化するため、年に一度見直しが必要とされています。

たとえば、民間企業の景気が悪化しているにもかかわらず、国家公務員の給料が毎年上がり続けるのは国民の理解が得られませんし、反対に民間企業の景気が上向きなのに国家公務員の給料が下がり続けるのも職員の士気が低下してしまいます。

したがって現在では、情勢適応の原則から、国家公務員の給与等については民間の賃金との適正な均衡を確保することが最も合理的と考えられています。

この適正な均衡を確保する手続きを「人事院勧告」と呼び、人事院が毎年8月頃に報告しています。

国家公務員法(昭和22年法律第120号)(抄)

(情勢適応の原則)

第28条 この法律及び他の法律に基づいて定められる職員の給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠つてはならない。

人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与を決定する諸条件の変化により、俸給表に定める給与を100分の5以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない

 

基本的には、国家公務員と民間の4月分の給与(月例給)を調査・比較し、得られた較差を埋めることを基本に勧告を行っています。また、民間の特別給(ボーナス)の直近1年間(前年8月から当年7月まで)の支給実績を調査した上で、民間の年間支給割合を求め、これに国家公務員の特別給(期末・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っています。

人事院勧告が内閣と国会に提出されると、政府は、人事院勧告制度を尊重する基本姿勢に立って、国政全般との関連につき検討の上勧告を実施するかどうか決定します。

閣議決定されると国会に提出され、審議を経て成立します。

  • STEP1
    国家公務員給与等実態調査
    給与法適用職員等の給与等の実態を把握し、人事行政の基礎資料とするために行われます。

    ・調査内容 4月分の給与(仕事の種類、役職段階、学歴、年齢等別)

    ・調査対象 非現業国家公務員約28万人

  • STEP2
    職種別民間給与実態調査
    公務員と民間企業の給与等を比較検討するための基礎資料の作成を目的として行われます。

    ・調査内容 4月分の賃金(仕事の種類、役職段階、学歴、年齢等別)

    ・調査対象 企業規模50人以上、事業所規模50人以上の事業所約50,200事業所のうちから抽出された約11,100事業所の従業員約46万人

    ・調査方法 実地調査

  • STEP3
    官民比較

    国家公務員(行(一))と民間の月例給を比較

    ・役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を比較(ラスパイレス方式)

    ・国家公務員の特別給の支給月数と民間の特別給の支給割合を比較

  • STEP4
    各方面の要望・意見等
    各地域において有識者、中小企業経営者等と意見交換を行います

  • STEP5
    各府省・職員団体
    各府省、職員団体等の要望・意見を聴取します

  • STEP6
    配分(個別給与の決定)
    俸給分と諸手当分の配分及び俸給表上の配分に当たっては、職務給の原則に立って、公務員給与の実態、民間賃金の実態及び配分傾向等に必要な配慮が加えられています。

  • STEP7
    人事院勧告
    国家公務員の給与水準の見直し等について内閣と国会に勧告します。

  • 内閣
    給与関係閣僚会議(協議)
    人事院勧告を踏まえた国家公務員の給与の取扱いについて協議することを目的として開催されます。

    会議の構成員は、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、国家公務員制度担当大臣および内閣官房長官です。必要に応じて関係大臣その他の関係者の出席者を求めることができます。

  • 内閣
    取扱方針閣議決定
    取扱いについて給与関係閣僚会議で検討し、閣議決定します

  • 内閣
    給与法案閣議決定
    人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみて給与法案を閣議決定します

  • 国会
    国会審議
    景気に与える影響などの観点から慎重に審議されます

  • 国会
    可決・成立
    法案に対して賛成多数の場合は可決・成立します

  • 施行
    月給のベースアップはその年の4月1日に遡及して実施されることが多いです。

    ボーナスの改定はその年の冬のボーナスから実施されることが多いです。