公務員の不祥事・炎上

参議院法制局の幹部が条文ミスを放置し、事実上の引責か(2021)

公職選挙法の条文ミスを2年以上放置していた問題が2021年4月に発覚した参議院法制局ですが、6月30日、山岸健一第1部長を25日付で法制主幹に充てる人事を発表しました。

法務主幹は部長の前に就く役職とされていて、参院法制局では異例の人事とのことで、「事実上の引責」との声も上がっています。

ちなみに、6月16日には当時の担当部長を戒告の懲戒処分、当時の担当課長2人を厳重注意すると発表していました。

○参院法制局人事(2021年6月25日)

氏名 新 ← 旧

加藤敏博 第1部長 ← 第2部長

小野寺理 第2部長 ← 第4部長・第2課長事務取扱

宮沢宏幸 第4部長・第2課長事務取扱 ← 法制主幹・調査課長事務取扱

山岸健一 法制主幹 ← 第1部長

○参院法制局人事(2021年7月1日)

井上勉 第5部長 ← 総務省政治資金適正化委員会事務局長

これまでの経緯まとめ

2013年

公職選挙法が改正され、「142条の4第6項」が新設される。この規定に違反した場合の罰則規定「244条第1項2の2」は、「142条の4第6項の規定に違反した者は~」という内容になる。

2018年

公職選挙法が改正され、条文内容はそのままで「142条の4第6項」が「142条の4第7項」に繰り下がる。罰則規定「244条第1項2の2」の内容についても「142条の4第6項の規定に違反した者は~」を「142条の4第7項の規定に違反した者は~」と修正すべきだったが、それを怠った。

2018年12月

総務省が条文のミスに気づき、参院法制局に指摘。しかし、情報は局内で共有されず、担当部長まででとどまる。

2020年2月

朝日新聞が条文のミスに気づき、参院法制局に指摘。しかし、情報が局内以外に共有されず。

2021年4月

17日、朝日新聞が条文のミスを報じる。

https://www.asahi.com/articles/ASP4K3GFBP3JPIHB01L.html

関係者の反応↓

自民党の世耕弘成参院幹事長「参議院法制局が総務省からの連絡で誤りに気付いていたにもかかわらず、国会議員に報告も相談もなかったことは、大変残念でゆゆしき問題だ。できるだけ早く、誤った状態が正されるよう、野党とも相談しながら、しかるべき措置をとっていきたい」

自民党の水落敏栄参院議院運営委員長「法案を出し直して審議することになるのではないか。修正しなければならない」

立憲民主党の福山幹事長「自民党が各会派の議論を踏みにじり、数の力で押し切って提出した議員立法の条文が間違っていた。総じて自民党の責任で、政府提出法案の条文などのミスについて各省庁に厳しく指摘している中で、非常に罪深い。猛省を促すとともに、今後どのような形で対応してくるのか、その姿勢をみていきたい」

立憲民主党の吉川沙織参議院議員「条文の整理漏れではなく、条文の誤りそのものだ。せめて報告は即座にすべきで、法制局はミスを生んだ主体として責任感が欠ける」

立憲民主党の森参議院幹事長「この法律は、自民党が与野党の協議に1度も付さずに数の力で無理矢理成立させてしまったもので、その過程で参議院法制局に法案づくりを急がせたことが、このような前代未聞の間違いにつながった。自民党は役所のせいにせず、みずからの責任をもっとしっかりと認識すべきだ」

国民民主党の川合参議院国会対策委員長「こうしたことが何の報告もないまま現在に至るまで放置されていたのは到底許されない。このままでは今後の参議院の選挙制度改革などの検討は進められず、各会派の代表者が集まり、今後の対応を議論する必要がある」

法制局長「われわれの不手際によって、議員の先生方にご心配をおかけすることになったことを心よりおわび申し上げます」「条文の整理漏れの情報が担当の部長でとどまり、組織として共有できず、関係者への報告はしていなかった。1年以上たってから組織として把握し、実質的な法律改正をする際に訂正できないか模索している間に時間がたってしまった」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210420/k10012985531000.html

2021年5月12日

条文のミスを修正する改正公職選挙法が参院政治倫理・選挙制度特別委員会理事会(参院倫選特委)で与党などの賛成多数で可決。

自民党の西田昌司議員「われわれが誤ったものを出した責任がある」「議員へ報告せず情報を遮断したのは万死に値する」

立憲民主党の吉川沙織議員「一義的に責任を負うのは、自民党であることは論をまたない」

日本維新の会の柴田巧議員「各会派の合意が大事にもかかわらず、それをしなかった自民の責任は大きい」

法制局長「補佐機関としての自覚が十分ではなかった。組織に問題があった」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051201400&g=pol

2021年5月14日

条文のミスを修正する改正公職選挙法が参院本会議で与党などの賛成多数で可決。

https://www.sankei.com/politics/news/210514/plt2105140007-n1.html

2021年5月25日

条文のミスを修正する改正公職選挙法が衆院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立。

2021年6月14日

法制局長、参院倫選特委において問題の調査結果と再発防止策を発表。

2021年6月16日

参院法制局、当時の担当部長を懲戒処分にすると発表。

現在の法制局長 月給の10%2か月分を自主返納
現在の次長 訓告
当時の担当部長 戒告
当時の担当課長2人 厳重注意

https://www.sankei.com/article/20210616-I37YXY5O5VOHDNAOCS5DCMKP3I/

2021年6月30日

参院法制局、山岸健一第1部長を法制主幹に充てる人事を発表。

https://www.sankei.com/article/20210630-KZIA2CBV2ZMR7OIEG365PJFVYU/

2021年7月27日

参院自民党、再発防止策をまとめた提言を参院法制局に提出。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA274ZA0X20C21A7000000/

2022年3月31日

山岸法制主幹が令和4年3月31日限りで定年退職

https://search.kanpoo.jp/r/20220401h706p8-1b/