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国家公務員と聞くと、「安定している」「ボーナスが多い」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、そのボーナスが具体的にどのような手当で構成されているかを知っている方は少ないのではないでしょうか。
国家公務員のボーナスは、「期末手当」と「勤勉手当」という2つの手当で成り立っています。この記事では、これらの手当がそれぞれどのようなもので、何が違うのか、そしてどのように支給額が決まるのかを、国の資料に基づいて分かりやすく解説していきます。国家公務員の給与制度への理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
国家公務員の給与はどんな構成?
国家公務員の給与は、主に「俸給(基本給)」と、それを補完する様々な「諸手当」から構成されています。諸手当には、扶養手当、住居手当、通勤手当など、生活条件や勤務地域、職務の特殊性に応じたものが含まれます。
そして、一般的に「ボーナス」と呼ばれるものが、この諸手当の一部である「期末・勤勉手当」にあたります。

期末手当とは?支給対象や計算方法
期末手当は、民間の賞与等のうち、一定率(額)分に相当する手当として位置づけられています。
これは、公務員には労働基本権の一部制約があるため、その代償措置として、民間の給与水準に合わせて勤務条件を定める人事院勧告に基づいて支給割合が決まる手当の一つです。
- 支給時期: 年2回、6月1日と12月1日に在職する職員等に支給されます。
- 支給月数: 年間の支給月数は、人事院勧告などによって変動しますが、例えば令和7年4月現在では年間4.6月分と定められており、このうち2.5月分が期末手当として支給されます。過去の改定を見ると、支給月数が引き下げられたり(令和2年度、令和3年度)、引き上げられたりしています。
- 計算方法: 支給額は、以下の要素を基に算出されます。
- 俸給(基本給)
- 専門スタッフ職調整手当
- 扶養手当
- これらに対する地域手当等(地域手当、広域異動手当、研究員調整手当)
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額 これらを合計した額に、期ごとの支給割合と、対象期間(基準日以前6ヶ月以内)の勤務期間に応じた割合(在職期間別割合)を乗じて計算されます。
例えば、令和6年6月期の一般職国家公務員(管理職を除く行政職職員)の平均支給額(成績標準者)は、約659,400円でした。
勤勉手当とは?期末手当との決定的な違い
勤勉手当も期末手当と同様に、民間の賞与等のうち、考課査定分に相当する手当として位置づけられています。期末手当と同じく、6月1日と12月1日に在職する職員等に支給されます。
では、期末手当との決定的な違いは何でしょうか?それは、人事評価(勤務成績)の結果に基づいて支給されるという点です。
- 支給月数: 年間の支給月数は、年間4.6月分のうち2.1月分が勤勉手当に充てられます(令和7年4月現在)。勤勉手当の月数も人事院勧告によって改定されることがあります。
- 計算方法: 期末手当と同様に、俸給等に所定の割合を乗じて計算されますが、勤勉手当の場合は、勤務成績に応じた評価が加味されるため、職員によって支給額に差が出ます。
つまり、期末手当は基本的なボーナスとして全員に一定の基準で支給される性質が強いのに対し、勤勉手当は個人の頑張りや成果が評価に反映され、支給額に影響を与える手当と言えます。
総理大臣や国会議員のボーナスは?特別職と一般職の違いを解説
内閣総理大臣や国務大臣といった「特別職」の国家公務員のボーナスは、一般職とは少し仕組みが異なります。
特別職のうち、内閣総理大臣、国務大臣、最高裁長官、衆・参両院議長、国会議員には、勤勉手当は支給されず、期末手当のみが支給されます。期末手当の支給月数は1.70月分とされています。
一方、事務次官や局長クラスといった一般職の職員には、期末手当と勤勉手当の両方が支給されます。
また、内閣総理大臣や国務大臣については、行財政改革推進の観点から、給与(期末手当を含む)の一部を国庫に返納するという申合せがなされています。
そのため、法律上の支給額と実際に支給される「返納後の額」が異なります。
例えば、令和6年12月期では、内閣総理大臣の法律上の支給額は約579万円ですが、実際の支給額(返納後)は約392万円とされています。
国務大臣の場合、法律上の支給額は約422万円、実際の支給額(返納後)は約327万円です。
このように、特別職のボーナスは、一般職とは手当の種類や支給月数、さらに返納の慣行がある点で違いがあります。
出典:令和6年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給|内閣官房内閣人事局
国家公務員のボーナスはどのように決まる?
国家公務員の給与水準は、国家公務員の労働基本権の制約(特に争議行為の禁止)に対する代償措置として設けられている人事院勧告制度によって、民間企業の給与実態に合わせて決定されることが基本方針とされています。
人事院が民間企業の給与を調査し、国家公務員の給与と比較して差があれば、国会と内閣に対して給与改定の勧告を行います。この勧告には、俸給月額の改定だけでなく、期末手当・勤勉手当の支給月数に関する内容も含まれます。
ただし、人事院勧告はあくまで勧告であり、国会を法的に拘束するものではありません。
国家公務員の給与を最終的に定めるのは、国民全体の意思を代表する国会であり、法律や予算の形式で決定されます。
国は勧告を尊重しつつも、国の財政状況や経済社会情勢などを考慮して、勧告どおりに実施するかどうかを判断します。
過去には、勧告が完全には実施されなかった例や、特例法によって一時的に給与が減額された例(東日本大震災後の給与減額措置など)もあります。
このように、国家公務員のボーナスを含む給与は、人事院勧告制度を基盤としつつも、最終的には国の様々な状況を考慮して国会で決定される仕組みになっています。

出典:
一般職の職員の給与に関する法律|e-Gov 法令検索
令和6年人事院勧告|人事院
まとめ:期末手当と勤勉手当の違いを知って、国家公務員の給与体系を理解しよう
国家公務員のボーナスである期末手当と勤勉手当について解説しました。
- 期末手当: 民間賞与の一部に相当し、基準日に在職していれば一定の計算方法で支給される基本的な手当。
- 勤勉手当: 民間賞与の考課査定分に相当し、個人の勤務成績によって支給額が変わる手当。
この「勤務成績による変動があるかどうか」が、この2つの手当の大きな違いです。
特別職の一部には勤勉手当が支給されないことや、給与返納の慣行があることも一般職との違いと言えます。
国家公務員の給与、そしてボーナスは、民間の給与水準を参考にしつつ、人事院の勧告を経て、最終的には国会で法律によって定められています。
この記事を通じて、国家公務員のボーナスが単一のものではなく、期末手当と勤勉手当という異なる性質を持つ手当から成り立っていること、そしてその支給には明確なルールがあることをご理解いただけたのではないでしょうか。
これらの知識は、国家公務員という職業をより深く知る上で役立つはずです。