目次
国家公務員の給与明細に出てくる「号俸」や「職務の級」って何?民間企業にはない独特な仕組みに戸惑う方も多いでしょう。
この記事では、若手公務員や公務員志望の方に向けて、「号俸」と「俸給」の違いを中心に、国家公務員の給与制度をわかりやすく解説します。
国家公務員の給与は「俸給」と「諸手当」で構成される
国家公務員の給与は、主に俸給(基本給)と、それを補完するさまざまな諸手当から成り立っています。
このうち、基本となる俸給は、さらに「職務の級」と「号俸」という二つの要素によって決められます。例えば、「行政職(一)5級10号俸」のように表記されるのを見たことがあるかもしれません。
まずは、この俸給を構成する「職務の級」と「号俸」について詳しく見ていきましょう。
国家公務員の「俸給」とは?職務の級と号俸の関係を徹底解説
俸給は、皆さんの「職務の級」と「号俸」の組み合わせで決まります。これらは、それぞれ異なる基準で設定されています。
職務の級=仕事のレベルを示す指標
「職務の級」は、皆さんが担当する職務の複雑さ、困難さ、責任の度合いに応じて決定されるものです。
これは、民間企業でいう役職や職務のグレードのようなものと考えると分かりやすいでしょう。例えば、係員、係長、課長といった職務のレベルが級によって示されます。
より上位の「職務の級」へ進むことを「昇格」と呼びます。
昇格するためには、人事評価の結果が考慮されるほか、現在の「職務の級」に一定期間在職していることなどの要件を満たす必要があります。
例えば、行政職(一)の職員が3級に昇格するためには、2級で4年の在職期間が必要とされる目安があります。
号俸=あなたの経験や能力を評価する指標
一方、「号俸」は、皆さんの能力や経験、日々の実績等に応じて決定されるものです。
同じ「職務の級」にいる職員でも、号俸が違うことで俸給に差が出ます。
つまり、経験年数が長くなったり、良い評価を得たりすることで、号俸が上がっていくイメージです。
号俸が上がることを「昇給」と言います。昇給も、人事評価の結果に基づいて行われる仕組みです。
特別な事情がない限り、毎年1月1日に昇給するのが一般的で、この標準的な昇給は4号俸とされています。人事評価が高い場合は、標準よりも多くの号俸が上がることもあります。
俸給と号俸の違いを分かりやすく整理
改めて、俸給は基本給全体を指し、その額を決める要素が「職務の級」と「号俸」です。
- 職務の級:「どのようなレベルの仕事(職責)を担当しているか」 を示します。主に昇格によって変化します。
- 号俸:「その職務レベルにおいて、どれだけ経験を積み、能力や実績があるか」 を示します。主に昇給によって変化します。
したがって、同じ「職務の級」(例えば係長級)にいる職員でも、経験年数や人事評価によって「号俸」が異なり、それに伴って俸給額も変わるということです。
職務の級が上がれば、同じ号俸でも俸給月額は上がります。
国家公務員の給与を補完する手当とボーナスの仕組み
国家公務員の給与は、俸給だけでなく、様々な諸手当によって構成されています。これらの手当は、職務の特殊性や勤務条件、地域差などを考慮して支給されるものです。
主な諸手当には、以下のようなものがあります。
- 地域手当: 勤務する地域の民間賃金や物価を考慮して支給されます。近年、支給地域や割合の見直しが行われました。
- 通勤手当: 通勤にかかる費用の一部を補填する手当です。上限額の拡大や新幹線料金の特例に関する対象範囲の拡大がありました。
- 扶養手当: 扶養家族がいる職員に支給されます。最近の改定で、配偶者への手当が廃止され、子への手当が増額されました(10,000円から13,000円へ)。
- 住居手当: 借家に住む職員に支給される手当です。支給対象となる家賃額の下限や上限額が見直されたことがあります。
- 単身赴任手当: 単身で赴任している職員に支給される手当です。支給対象範囲の拡大が行われました。
- 在宅勤務等手当: 新たに設けられた手当で、在宅勤務を中心に行う職員の光熱・水道費等の負担を軽減するため、月額3,000円が支給されます(令和6年4月から実施)。
これらの手当が俸給に加算されて、毎月の給与額が決まります。
また、年に2回(6月と12月)支給される期末・勤勉手当(いわゆるボーナス)も給与の重要な部分です。特に勤勉手当は、人事評価の結果に基づいて支給額が変わります。近年、ボーナス(期末・勤勉手当)についても引上げ勧告が続いています。
なお、高度な専門的な知識や経験を持つ職員を一定期間任用する特定任期付職員には、特別な俸給表が適用される場合があります。こうした職員には、その専門性に応じた給与が支給されることがあり、最近では特定任期付職員に対しても勤勉手当が支給されるようになりました。

国家公務員の給与水準はどう決まる?人事院勧告制度
国家公務員の給与水準は、人事院勧告制度を通じて決定・見直しが行われています。
これは、国家公務員の労働基本権(ストライキ権など)に制約があることへの代償措置として重要な役割を果たしています。
人事院は毎年、民間企業の給与実態を調査し、国家公務員の給与水準との官民較差を把握します。
この較差に基づき、給与を改定すべきかどうか、どの程度改定すべきかについて、国会と内閣に勧告を行います。これは「民間準拠の原則」と呼ばれ、国家公務員の給与水準決定の客観性を保つための基準とされています。
政府は人事院勧告を尊重しますが、最終的な給与決定権は国会にあり、国の財政状況や経済社会情勢なども考慮して決定されます。
過去には、財政状況が厳しい等の理由で勧告通りに実施されなかったり、給与減額措置が講じられたりした例もありますが、これらは異例と位置づけられています。
近年では、官民較差を解消するため、俸給や期末・勤勉手当の引上げ勧告が続いており、特に若年層の俸給に重点を置いた引上げや、昇格による給与上昇メリットの拡大など、若い世代の処遇改善に向けた動きが見られます。

出典:
一般職の職員の給与に関する法律|e-Gov 法令検索
令和6年人事院勧告|人事院
まとめ
国家公務員の給与の基本となる「俸給」は、担当する職務のレベルを示す「職務の級」と、個人の経験や能力、実績を示す「号俸」の組み合わせで決まります。
- 職務の級は、職責(係員、係長など)に応じて決まり、昇格によって上がります。
- 号俸は、能力や経験に応じて決まり、昇給によって上がります。昇給は人事評価に基づき毎年行われ、標準は4号俸です。
給与全体としては、この俸給に、地域手当や扶養手当などの様々な「諸手当」や、人事評価が反映される「期末・勤勉手当(ボーナス)」が加算されます。
国家公務員の給与水準は、人事院勧告制度により、民間の給与水準などを踏まえて見直されます。近年は若年層の処遇改善も進められています。
「号俸」は、基本給の中で、あなたの経験や実績がどれだけ積み上がっているかを示す具体的な指標と言えます。自身の「職務の級」と「号俸」を把握することで、給与の仕組みへの理解が深まり、今後のキャリアや収入の見通しを立てやすくなるでしょう。