定年引き上げ

公務員の定年延長と再任用の違いは?給与・退職金・勤務時間を比較

公務員の「定年延長」と「再任用」は、どちらも60歳以降に働く仕組みですが、職員としての身分や給与、勤務時間、退職手当の扱いは大きく異なります。

最も大きな違いは、定年延長では退職せずに正規職員として勤務を続けるのに対し、再任用ではいったん退職し、改めて選考により採用される点です。

なお、2023年度に従来の再任用制度は廃止され、現在は主に「暫定再任用」と「定年前再任用短時間勤務」という2つの制度が設けられています。ここでは国家公務員を基準に、地方公務員にも共通する基本的な考え方を整理します。法令や人事院資料では「定年の段階的引上げ」と表記されますが、この記事では一般的な呼び方に合わせて「定年延長」とします。

この記事のポイント

身分の違い
定年延長では退職せずに勤務を継続し、再任用ではいったん退職してから選考採用される
再任用の使い分け
60歳以降定年前に短時間へ移るなら定年前再任用、定年退職後に働くなら暫定再任用
給与の違い
定年延長は俸給月額が原則7割水準、再任用は再任用職員用の基準額で決まる

定年延長と再任用の違いを一覧で比較

現在の制度を理解するには、「定年延長」「暫定再任用」「定年前再任用短時間勤務」の3つに分けて見るのが分かりやすいでしょう。

比較項目 定年延長 暫定再任用 定年前再任用短時間勤務
退職の有無 退職しない 定年退職後に再採用 60歳以降に一度退職して再採用
身分 任期のない常勤職員 任期付きの再任用職員 任期付きの短時間勤務職員
任期 定年退職日まで 1年以内。更新により最長65歳到達年度末まで 定年退職日相当日まで
勤務時間 原則週38時間45分 フルタイムまたは週15時間30分~31時間 週15時間30分~31時間
俸給・給料 60歳前の俸給月額の原則7割水準 職務の級ごとの再任用基準額 再任用基準額を勤務時間に応じて按分
期末・勤勉手当 常勤職員として支給 再任用職員の支給月数を適用 再任用職員の支給月数を適用。基礎となる俸給は勤務時間に応じた額
退職手当 最終的な定年退職時に支給 最初の退職時に精算。再任用期間には原則支給なし 最初の退職時に精算。再任用期間には原則支給なし
役職 管理職は原則60歳で役職定年 再任用後の官職により決定 短時間勤務の官職により決定
採用方法 在職したまま勤務を継続 勤務成績や経験などに基づく選考 勤務成績や経験などに基づく選考

定年延長は、単に従来の再任用期間を正規職員に置き換えた制度ではありません。任期、給与体系、退職手当の精算時期などが異なる、別の任用形態です。

公務員の定年は段階的に65歳へ引き上げ

国家公務員の原則定年は、2023年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げられています。2026年度の定年年齢は62歳です。

年度 原則定年
2022年度以前 60歳
2023・2024年度 61歳
2025・2026年度 62歳
2027・2028年度 63歳
2029・2030年度 64歳
2031年度以降 65歳

この表は、その年度に適用される定年年齢を示したものです。「2026年度の定年が62歳だから、2026年度に60歳になる職員も必ず62歳で退職する」という意味ではありません。

定年延長では正規職員のまま勤務を続ける

定年延長では、60歳で退職手続を行うわけではありません。任期のない職員としての身分を維持し、段階的に引き上げられた定年まで勤務します。

年次休暇なども通常どおり扱われ、退職手当は最終的に定年退職するときに支給されます。60歳前後で職務内容が同じ場合でも、俸給月額は60歳に達した日後の最初の4月1日から原則として7割水準になります。

管理職は原則60歳で役職定年

定年が延びても、管理職としての在職期間まで一律に延びるわけではありません。

本府省の課長や部長などの管理監督職は、原則として60歳に達した日後の最初の4月1日までに、管理監督職以外の官職へ降任または転任します。公務の運営に著しい支障が生じる場合などには特例任用がありますが、例外的な扱いです。

そのため、管理職では「役職定年による降任」と「60歳超の7割措置」の両方を踏まえて、給与を確認する必要があります。

暫定再任用はいったん定年退職してから働く制度

暫定再任用は、定年が65歳に到達するまでの経過措置です。62歳など、その年度の定年で退職した職員を、最長65歳まで改めて採用できます。

任期は1年以内で、勤務実績などを考慮して更新されます。勤務形態には週38時間45分のフルタイムと、週15時間30分から31時間までの短時間勤務があります。

法律上は自動的な雇用継続ではなく、従前の勤務成績、経験、資格などに基づく選考採用です。本人が希望すれば、必ず同じ部署・同じ役職・同じ勤務時間で採用されるとは限りません。

再任用の給与は「定年前の7割」ではない

暫定再任用職員の俸給は、退職前に受けていた俸給の7割を計算するのではなく、再任用後の職務の級ごとに設定された基準俸給月額で決まります。

短時間勤務の場合は、次のように勤務時間の割合を掛けて計算します。

基準俸給月額 × 週の勤務時間 ÷ 38時間45分

国家公務員の期末・勤勉手当は、2026年度の行政職俸給表(一)6級以下・標準的な勤務成績の例で年間2.41月分です。実際の給与は、適用される俸給表、職務の級、勤務時間、地域手当などによって異なります。

定年前再任用短時間勤務は60歳以降に働き方を縮小する選択肢

定年前再任用短時間勤務は、60歳以降もフルタイムで定年まで勤務するのではなく、いったん退職して短時間勤務へ移る制度です。

勤務時間は週15時間30分から31時間までです。例えば、1日7時間45分の週4日勤務なら週31時間となり、制度上の範囲に入ります。

ただし、本人が勤務日数を自由に決められる制度ではありません。実際の勤務形態は、任命権者が設ける短時間勤務の官職や職場の運用によって決まります。

任期は65歳まで一律に続くのではなく、その短時間勤務の官職に対応する常勤職員なら定年退職する日である「定年退職日相当日」までです。定年の段階的引き上げ期間中は、その後に暫定再任用の対象となり、65歳到達年度末まで勤務できる場合があります。

定年前再任用短時間勤務へ移る際には、正規職員としてはいったん退職するため、その時点で退職手当が支給されます。60歳以降に定年前退職を選択した場合でも、当分の間は定年退職と同様の支給率を用いる特例があります。

給与はどれくらい変わる?モデルケースで比較

次は制度差を理解するための単純なモデルケースです。実際の俸給表や役職、地域手当を再現したものではなく、期末・勤勉手当や各種手当も含めていません。

働き方 計算条件 月額の目安 年間の俸給相当額
定年延長 60歳前の俸給月額40万円×70% 28万円 336万円
暫定再任用・フルタイム 再任用後の基準俸給月額を25万円と仮定 25万円 300万円
再任用・週31時間 25万円×31時間÷38時間45分 約20万円 約240万円

この例では定年延長の月額が最も高くなりますが、再任用の基準俸給月額によって結果は変わります。また、年収を比較するときは、期末・勤勉手当、地域手当、通勤手当、超過勤務手当なども含めて確認する必要があります。

退職手当の違いは支給時期と勤続期間

定年延長では職員関係が継続するため、退職手当は引き上げ後の定年で退職するときに支給されます。60歳以降の勤務期間も、原則として退職手当の勤続期間に加わります。

俸給が7割水準に下がったことだけを理由に退職手当まで単純に3割減らないよう、退職手当の計算にはピーク時特例などが設けられています。

一方、暫定再任用や定年前再任用短時間勤務では、最初に退職した時点で正規職員としての退職手当を精算します。その後の再任用期間について、新たな退職手当は原則として支給されません。

制度 退職手当を受け取る時期 再任用期間の退職手当
定年延長 引き上げ後の定年で退職するとき 60歳以降の期間も勤続期間に算入
暫定再任用 定年退職時 原則なし
定年前再任用短時間勤務 60歳以降に正規職員を退職したとき 原則なし

60歳以降の収入を比較するときは、毎月の給与だけでなく、退職手当を受け取る時期、勤続期間、社会保険の加入条件まで含めて判断する必要があります。

結局、どの働き方を選ぶことになる?

3つの制度は、誰でも同じ時期に自由に選べる選択肢ではありません。

状況・希望 該当する主な制度
定年までフルタイムを基本に働きたい 定年延長
60歳以降、勤務日数や時間を減らしたい 定年前再任用短時間勤務
段階的に引き上げられた定年で退職した後も働きたい 暫定再任用
定年年齢が65歳となる対象世代で、65歳まで常勤で働きたい 定年引上げ後の常勤職員として勤務

収入を重視する場合は、一般に定年延長によるフルタイム勤務が有力です。一方、健康、介護、家族との時間などを重視する場合は、定年前再任用短時間勤務が選択肢になります。

暫定再任用は、定年退職後の制度です。現在の定年年齢に達していない職員が、正規職員の身分を維持したまま暫定再任用へ移ることはできません。

地方公務員も基本構造は同じ

地方公務員についても、定年の段階的引き上げ、役職定年、60歳超職員の給料月額7割措置、定年前再任用短時間勤務、暫定再任用という基本構造は同様です。

ただし、具体的な給料表、再任用後の級、勤務時間、手当、選考方法などは、各自治体の条例や人事委員会規則によって異なります。国家公務員の基準俸給月額や支給月数を、そのまま地方公務員へ当てはめることはできません。

自治体職員の場合は、所属団体から行われる60歳以降の制度説明や意思確認に加え、給与条例、退職手当条例、再任用の募集案内を確認するのが確実です。

FAQ

定年延長後も60歳でいったん退職しますか?
原則として退職しません。60歳以降も任期のない職員として勤務を続け、段階的に引き上げられた定年に達した年度末で退職します。本人が定年前再任用短時間勤務を希望する場合などは、60歳以降にいったん退職します。
定年延長と再任用はどちらも給与が7割ですか?
同じではありません。定年延長後の俸給月額は原則として60歳前の7割水準ですが、再任用は職務の級ごとに設定された基準俸給月額で決まります。短時間勤務では、さらに勤務時間の割合が反映されます。
再任用を希望すれば必ず65歳まで働けますか?
無条件に65歳まで働ける制度ではありません。暫定再任用は選考による採用で、任期は1年以内です。更新すれば最長65歳到達年度末まで勤務できますが、毎年の更新や同じ部署・役職での勤務が保証されるわけではありません。定年前再任用短時間勤務も選考採用で、任期は定年退職日相当日までです。
定年前再任用短時間勤務なら週4日勤務にできますか?
週31時間で1日7時間45分勤務とする場合は、制度上は週4日勤務が可能です。ただし、勤務日や勤務時間は本人だけで決めるものではなく、任命権者が設ける官職や職場の勤務体制によって決まります。
教員、警察官、消防職員も同じ定年ですか?
一般的な職員には同様の仕組みが適用されますが、職務の特殊性などから特例定年が定められている職種もあります。また、地方公務員は自治体の条例による違いがあるため、所属先の規定を確認する必要があります。

出典・作成方針

2026年8月23日時点の公表資料をもとに、国家公務員の一般的な制度を中心として作成しています。モデルケースの金額は制度差を示すための参考試算であり、実際の支給額ではありません。地方公務員の具体的な勤務条件は各自治体の条例・規則によって異なります。

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