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国立大学の職員のキャリアパスについては多くの文献があり、当ブログでも取り上げたことがあります。
これだけ注目されるのは、2004年の法人化を機にキャリアパスが一変し、今なお変化し続けていることが理由として考えられます。
人事は特にデリケートな話題で、表に出ることは少ないのですが、各国立大学の幹部職員の経歴は「文部科学省幹部職員名鑑」で顔写真付きで細かく確認することができるため、調査対象になりやすいのも理由の一つでしょう。他の公務員でこれだけ細かく経歴が一般公開されていることはないと思います。
法人化によって管理職ポストに変化が起きた
法人化前の国家公務員時代は、級別定数で管理されており、各役職の人数は厳格に定められていました。
級別定数とは、各省庁ごとに割り当てられた職員の数のことで、級別定数が多いほど上位の職に昇進しやすく、少ないほど昇進しづらい特徴があります。国立大学の級別定数は特に少なかったと言われています。
法人化によって級別定数による管理から総人件費管理へ移行し、各大学の判断で管理職ポストを増やすことが可能になりました。
例えば、係員ポストを10つ減らす代わりに係長ポストを1つ増やしたり、課長ポストを5つ減らす代わりに部長ポストを1つ増やしたりすることができるようになりました。
管理職には誰が就くのか
大学経営政策研究第10号に掲載されている飯塚 潤氏の「法人化に伴う国立大学監部事務職員の人事管理の変化に関する分析」(2020年)によると、に国立大学の管理職になる人はⅠ~Ⅴの5つのタイプがあるそうです。
タイプⅠ
総合職 |
タイプⅡ
異動官職 |
タイプⅢ
異動官職 |
タイプⅣ
プロパー |
タイプⅤ
その他 |
国家総合職出身の人がタイプⅠです。彼らは文部科学省の本省に採用後、5年弱で本省係長に昇進し、10年弱で本省課長補佐になります。この記事では「総合職」と呼びます。
タイプⅡは大学採用後、20代後半で本省に転任し、係長級になったあと、40歳前後で大学の課長となる職員です。行政実務研修で文科省に1~3年在籍した人は含みません。
タイプⅢは、大学採用後、各大学で係長や課長補佐になった後、他の大学の課長になる職員です。その後、基本的に複数の大学を異動し、元の大学に戻る場合もあります。本省に異動しないことが特徴の一つです。
タイプⅡとⅢは通称「異動官職」とも呼ばれ、前回の記事でも取り上げました。この記事でもタイプⅡとⅢはそのように呼びます。
タイプⅣは、大学採用後、各大学で係長や課長補佐となったあと、学内登用で課長になる職員です。一般的には「プロパー職員」と呼ばれ、この記事でもそのように表現します。
最後のタイプⅤが上記のいずれにも当てはまらない職員で、財務局や国税局など他省庁からの出向者や民間企業からの採用者を指します。この記事では特に扱いません。
管理職は大きく3つの職階があります。
- 局長級
理事、事務局長、副理事など
- 部長級
総務部長、人事部長、財務部長、学生部長、担当部長、事務部長など
- 課長級
総務課長、人事課長、財務課長、学生課長、担当課長、事務長など
各職階のポストの数の推移
飯塚氏は、幹部職員を局長級、部長級、課長級の3つの職階に分けて、その上で各職階におけるキャリア・パターンごとの人数を年度別に集計し、経年の変化を確認しています。
局長級
※表4「職階別、キャリア・パターン集計」を一部改変して作図
局長級は基本各大学に1人置かれていて、3分の1が総合職、3分の2が異動官職でした。残念ながらプロパー職員で局長級まで上り詰めている例は過去にも現在にも一人もいません。
部長級
※表4「職階別、キャリア・パターン集計」を一部改変して作図
部長級における総合職の割合はほとんど少なく、法人化前は異動官職が9割近くでした。近年は異動官職の割合も減少傾向で、プロパー職員の割合が増加しています
課長級
※表4「職階別、キャリア・パターン集計」を一部改変して作図
課長級においては昔は3分の2が異動官職、3分の1がプロパー職員でしたが、近年は比率が逆転しています
まとめ
飯塚氏は、
「文部科学省人事を侵害しない範囲で学内登用を増加させる」
「政策動向に明るい人材等への需要から、文部科学省人事は維持される」
「全体の管理職ポストを増加させて、文部科学省人事及び学内登用に対応する」
の3つの仮説をいずれも妥当だとしています。
今後もますます学内登用が増加し、プロパー職員が事務局長に就く日もそう遠くはないでしょう。
飯塚潤 2020「法人化に伴う国立大学監部事務職員の人事管理の変化に関する分析」 大学経営政策研究 第10号