国家専門職の年収は、採用直後の平年ベースでおおむね額面400万~540万円、適用俸給表別の平均給与月額を使った試算では650万~750万円程度が目安です。
ただし、「国家専門職」という一つの職種や共通の給与表があるわけではありません。国税専門官、財務専門官、労働基準監督官、航空管制官などで適用される俸給表が異なるため、同じ専門職試験でも年収には差があります。
特に国税専門官、皇宮護衛官、刑務官、法務教官などは、一般的な行政職より高い初任給が設定されています。一方、財務専門官や保護観察官は行政職俸給表(一)が適用されるため、給与水準だけを見ると国家一般職に近い職種です。
この記事のポイント
国家専門職とは特定分野の専門職員を採用する試験区分
国家専門職試験は、特定の行政分野に必要な専門知識や適性を持つ職員を採用するための試験です。2026年度に実施される主な専門職試験には、次の職種があります。
- 皇宮護衛官
- 刑務官
- 法務省専門職員(矯正心理専門職・法務教官・保護観察官)
- 財務専門官
- 国税専門官
- 食品衛生監視員
- 労働基準監督官
- 航空管制官
- 海上保安官
試験区分が同じでも、採用後の所属省庁、適用俸給表、地域手当、交替制勤務の有無が異なります。そのため、「国家専門職の平均年収」という一つの数字だけで比較するのは適切ではありません。
国家専門職の初任給・採用直後の年収一覧
次の表は、2026年4月1日現在の給与制度と各試験の受験案内に掲載された月額をもとにしたものです。年収は、掲載月額を12か月分、ボーナスを4.65月分として単純計算した平年ベースの額面です。
| 職種 | 受験案内の月額例 | 年収モデル | 主な前提 |
|---|---|---|---|
| 皇宮護衛官 | 31万8,720円 | 約531万円 | 東京都特別区、公安職(一)1級21号俸 |
| 刑務官(大卒) | 32万3,040円 | 約538万円 | 東京都特別区、公安職(一)2級13号俸 |
| 矯正心理専門職・法務教官 | 31万6,320円 | 約527万円 | 東京都特別区、公安職(二)1級21号俸 |
| 保護観察官 | 27万8,400円 | 約464万円 | 東京都特別区、行政職(一)1級25号俸 |
| 財務専門官 | 27万8,400円 | 約464万円 | 東京都特別区、行政職(一)1級25号俸 |
| 国税専門官 | 31万8,480円 | 約530万円 | 東京都特別区、税務職1級22号俸 |
| 食品衛生監視員 | 27万9,360円 | 約465万円 | 受験案内に掲載された採用当初の例 |
| 労働基準監督官 | 28万440円 | 約467万円 | 東京都特別区、行政職(一)1級26号俸 |
| 航空管制官 | 25万7,520円 | 約429万円 | 航空保安大学校での研修時、地域手当を含む |
| 海上保安官 | 研修時24万1,280円 | 約402万円 | 海上保安大学校での研修期間 |
| 海上保安官 | 現場配属後32万1,256円 | 約535万円相当 | 公安職(二)1級28号俸、大型巡視船乗船の例 |
表の年収には、住居手当、扶養手当、超過勤務手当、夜勤手当、特殊勤務手当などを原則として含めていません。また、採用1年目は6月のボーナスが満額にならないため、実際の初年度年収は表の平年ベースより低くなります。
勤務地によって初任給は月5万円前後変わる
東京都特別区に勤務する職員には、原則として俸給月額の20%に相当する地域手当が加算されます。一方、地域手当が支給されない勤務地では、同じ号俸でも月額が低くなります。
代表的な職種について、東京都特別区と地域手当非支給地を比較すると次のとおりです。
| 職種 | 東京都特別区 | 地域手当なし | 月額差 |
|---|---|---|---|
| 財務専門官 | 27万8,400円 | 23万2,000円 | 4万6,400円 |
| 国税専門官 | 31万8,480円 | 26万5,400円 | 5万3,080円 |
| 労働基準監督官 | 28万440円 | 23万3,700円 | 4万6,740円 |
| 矯正心理専門職・法務教官 | 31万6,320円 | 26万3,600円 | 5万2,720円 |
| 保護観察官 | 27万8,400円 | 23万2,000円 | 4万6,400円 |
| 刑務官 | 32万3,040円 | 26万9,200円 | 5万3,840円 |
地域手当の差はボーナスにも影響します。東京都特別区と非支給地では、同じ職種・同じ号俸でも額面年収に70万~90万円程度の差が生じることがあります。
ただし、都市部は家賃などの生活費も高いため、地域手当がそのまま可処分所得の差になるわけではありません。
俸給表別にみた推定年収は約653万~750万円
人事院の2025年国家公務員給与等実態調査では、職種単位ではなく、適用される俸給表ごとに平均給与月額が公表されています。
次の年収は、「平均給与月額×12か月」に、俸給と地域手当等を基礎としたボーナス4.65月分を加えたKomuInfoの概算です。超過勤務手当などを含まないため、実際の年間給与とは一致しません。
| 適用俸給表 | 該当する主な専門職 | 平均年齢 | 平均給与月額 | 推定年収 |
|---|---|---|---|---|
| 行政職俸給表(一) | 財務専門官、労働基準監督官、保護観察官など | 41.9歳 | 41万4,480円 | 約673万円 |
| 専門行政職俸給表 | 研修修了後の航空管制官など | 42.9歳 | 46万1,821円 | 約750万円 |
| 税務職俸給表 | 国税専門官、税務職員 | 41.3歳 | 44万2,129円 | 約722万円 |
| 公安職俸給表(一) | 皇宮護衛官、刑務官など | 41.7歳 | 39万9,794円 | 約653万円 |
| 公安職俸給表(二) | 矯正心理専門職、法務教官、海上保安官など | 39.8歳 | 42万4,820円 | 約692万円 |
この表は、例えば「財務専門官だけ」「航空管制官だけ」を集計した平均ではありません。同じ俸給表を使う他職種も含まれるため、各専門職の平均年収そのものではなく、給与水準を比較するための参考値です。
国家専門職の年収を構成するもの
国家専門職の年収は、基本給に当たる俸給だけで決まりません。主に次の給与が合算されます。
俸給月額
職務の級と号俸によって決まる基本給です。通常は年1回の昇給があり、昇任すると上位の級へ移ります。国税専門官には税務職俸給表、航空管制官には一定の段階から専門行政職俸給表が適用されるなど、職種による違いがあります。
地域手当
民間賃金や物価が高い地域に勤務する職員に支給されます。東京都特別区は20%で、地域によって支給割合が異なります。
期末手当・勤勉手当
民間企業のボーナスに相当します。2026年4月1日現在の年間支給月数は約4.65月です。2026年人事院勧告では4.70月への引上げが勧告されています。
住居手当・扶養手当
賃貸住宅に住む職員には、要件を満たせば月額最高2万8,000円の住居手当が支給されます。扶養手当は、子1人につき月額1万3,000円などです。
超過勤務手当・特殊勤務手当
残業をした場合には超過勤務手当が支給されます。また、交替制勤務、夜間勤務、危険性や特殊性の高い業務では、夜勤手当や特殊勤務手当などが加算される場合があります。
刑務官、法務教官、皇宮護衛官、海上保安官などは、交替制勤務や現場勤務に伴う手当によって、同じ基本給の行政職より実際の年収が高くなることがあります。
具体的な年収モデル
財務専門官・23歳・東京都特別区勤務
大学卒業後に採用され、行政職俸給表(一)1級25号俸、月額27万8,400円が適用されるケースです。
| 月例給与 | 27万8,400円 |
|---|---|
| 12か月分 | 334万800円 |
| ボーナス4.65月分 | 約129万5,000円 |
| 平年ベースの額面年収 | 約463万5,000円 |
| 住居手当を満額受給する場合 | 約497万円 |
超過勤務手当、通勤手当、扶養手当は含めていません。独身で住居手当を受給する場合、手取りは年間約380万~405万円が目安です。
国税専門官・23歳・東京都特別区勤務
税務職俸給表1級22号俸、月額31万8,480円が適用されるケースです。
| 月例給与 | 31万8,480円 |
|---|---|
| 12か月分 | 382万1,760円 |
| ボーナス4.65月分 | 約148万1,000円 |
| 平年ベースの額面年収 | 約530万3,000円 |
| 住居手当を満額受給する場合 | 約564万円 |
独身で住居手当を受給する場合の手取りは、年間約430万~455万円が目安です。税務職俸給表が適用されるため、財務専門官より採用直後の額面年収が約67万円高いモデルになります。
国家一般職より必ず年収が高いわけではない
専門職試験から採用されたからといって、すべての職種に専門職専用の高い俸給表が適用されるわけではありません。
財務専門官、労働基準監督官、保護観察官などは、基本的に行政職俸給表(一)が適用されます。国家一般職の行政区分から採用された職員と同じ俸給表であり、初任給や昇給の仕組みに大きな差はありません。
一方、国税専門官には税務職俸給表、航空管制官には専門行政職俸給表、皇宮護衛官や刑務官などには公安職俸給表が適用されます。これらの職種は行政職より基本給が高めですが、転勤、交替制勤務、夜間勤務、身体的負担なども考慮する必要があります。
国家専門職を比較するときは、初任給だけでなく、勤務地、転勤範囲、勤務時間、昇任先、適用俸給表まで確認する必要があります。
結局、国家専門職の年収はどう見ればよいか
採用直後の給与を重視する場合は、国税専門官、皇宮護衛官、刑務官、矯正心理専門職、法務教官が比較的高い水準です。東京都特別区勤務の月額例では約31万6,000円から32万3,000円となっています。
長期的な平均給与では、航空管制官などが含まれる専門行政職俸給表が約750万円、国税専門官などの税務職俸給表が約722万円と高めです。
一方、財務専門官や労働基準監督官は行政職俸給表(一)であるため、給与面だけなら国家一般職との差は限定的です。仕事の専門性、採用後のキャリア、転勤範囲を含めて判断する必要があります。
国家専門職全体の目安としては、採用直後の平年ベースが額面400万~540万円程度、平均年齢に近い40歳前後の俸給表別推定年収が650万~750万円程度です。同じ年代でも、職種、役職、勤務地、手当によって差が出ます。
FAQ
国家専門職で最も年収が高いのはどの職種ですか?
国家専門職の初年度年収はいくらですか?
国税専門官と財務専門官ではどちらの年収が高いですか?
国家専門職の手取りはいくらですか?
2026年人事院勧告の賃上げは反映されていますか?
出典・作成方針
- 人事院「国家公務員採用試験 受験案内一覧」
- 人事院「国家公務員の俸給表(2026年4月1日現在)」
- 人事院「2025年国家公務員給与等実態調査報告書」
- 人事院「2026年人事院勧告・報告の概要」
- 人事院「2026年給与勧告のポイント」
- 人事院「2026年度皇宮護衛官、刑務官、法務省専門職員、財務専門官、国税専門官、食品衛生監視員、労働基準監督官、航空管制官、海上保安官受験案内」
初任給は各受験案内の掲載額を使用しています。年収は、月例給与12か月分とボーナス4.65月分を基礎としたモデルケースです。俸給表別の平均年収は公表された平均給与月額等から算出した参考値であり、特定職種だけの公式平均年収ではありません。



