事務次官は、中央省庁で働く国家公務員の中でも、最上位に位置する代表的な役職です。ニュースで「○○省の事務次官」と聞くことがありますが、単に大臣の次にいる人というより、省の行政実務を束ねる「事務方トップ」と考えると分かりやすいでしょう。
国家行政組織法では、各省に事務次官を1人置き、「大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する」と定めています。つまり、局長や審議官を含む巨大な組織を横断して、省全体の行政実務を統括するポストです。
ただし、「省で一番偉い人=事務次官」という説明では少し不正確です。省そのもののトップは大臣であり、副大臣や大臣政務官といった政治任用のポストもあります。事務次官がトップなのは、あくまで官僚・常勤職員を中心とする事務方の世界です。
この記事のポイント
事務次官とは?各省の「事務方トップ」
事務次官について最も重要なのは、単なる「大臣の補佐役」ではないという点です。
国家行政組織法第18条では、事務次官について、各省に1人を置き、大臣を助けるとともに、省務を整理し、各部局・機関の事務を監督すると規定しています。
省庁には、官房、局、部、課など多数の組織があります。たとえば大きな省では、複数の局長、その下に多数の課長、課長補佐、係長、係員がいます。事務次官は特定の1局だけを担当するのではなく、そうした省全体の行政運営を見る立場です。
内閣人事局も、各府省等の事務次官等を「事務方トップ」と表現しています。
なお、「各省」とは別の法律で組織される内閣府にも事務次官が1人置かれています。また、復興庁にも法律上、事務次官が1人置かれています。したがって、「事務次官=省にしか存在しない」とまで言い切るのは正確ではありません。
事務次官はどのくらい偉い?局長より上の最高幹部
官僚の出世という意味では、事務次官はほぼ頂点です。
役職の関係をかなり単純化すると、次のように見ることができます。
| 立場 | 代表的な役職 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 政治 | 大臣 | 省の長 |
| 政治 | 副大臣・大臣政務官 | 大臣を政治面から補佐 |
| 官僚 | 事務次官 | 事務方トップ |
| 官僚 | 局長・官房長など | 省内の主要部門を統括 |
| 官僚 | 審議官・部長など | 重要政策・部門を担当 |
| 官僚 | 課長 | 課を統括する管理職 |
| 官僚 | 課長補佐 | 課長を補佐し実務を取りまとめる |
この表は法令上の厳密な上下関係を一列に並べたものではなく、読者が省庁内の立ち位置をつかむための概略です。省庁によって局長級・審議官級などの配置や名称は異なります。
「大臣と事務次官はどちらが偉い?」には注意
省の長は大臣なので、組織全体のトップが事務次官というわけではありません。一方、大臣は政治家であり、事務次官は官僚です。「政治家も含めた省のトップは大臣」「官僚としてのトップは事務次官」と分けると理解しやすくなります。
事務次官は何をしている?仕事内容を具体的に見る
事務次官が毎日、自分で法案を書いたり予算資料を作ったりするわけではありません。実務そのものは各局・各課が担当し、事務次官は省全体を動かす立場になります。
大臣を行政実務面から支える
大臣は政治家として政策判断や国会対応などを行います。一方、実際に政策を制度へ落とし込み、何万人という職員を使って実施していくには行政組織の調整が必要です。その最上位で大臣を支えるのが事務次官です。
複数の局をまたぐ重要案件を調整する
政策によっては、1つの局だけでは完結しません。局同士の意見が異なる場合や、省として最終的な方針を決める必要がある案件では、官房長や局長などの幹部を束ねながら、省全体としての方向を整理する役割が重要になります。
省全体の組織運営を見る
事務次官は、国家行政組織法上「各部局及び機関の事務を監督する」立場です。個別政策だけではなく、人事、組織運営、危機対応、他省庁との調整など、省全体に関係する問題にも関与します。
会社に無理やり置き換えるなら、大臣が政治的な意思決定を担うトップで、事務次官が巨大組織の日常的な行政運営を統括する最高幹部、と考えるとイメージしやすいでしょう。ただし、民間企業の社長やCOOと制度上同じ役職という意味ではありません。
事務次官の給料はいくら?2026年は月122万4,000円
事務次官クラスになると、一般の国家公務員が多く使う行政職俸給表ではなく、幹部職員向けの指定職俸給表が適用されます。
人事院が公表している2026年4月1日現在の指定職俸給表は、1号俸から8号俸まで設定され、最高の8号俸は月122万4,000円です。指定職俸給表そのものにも、適用対象として「事務次官」が明記されています。
| 区分 | 俸給月額 | 年間の基本俸給を単純計算 |
|---|---|---|
| 2026年4月時点・指定職8号俸 | 122万4,000円 | 1,468万8,000円 |
| 2026年人事院勧告後 | 126万1,000円 | 1,513万2,000円 |
| 差 | 月3万7,000円 | 年44万4,000円 |
年間額は「俸給月額×12か月」で計算した基本俸給だけのモデルケースです。実際の年間給与には期末・勤勉手当などが加わるため、この1,468万8,000円がそのまま「事務次官の年収」という意味ではありません。
さらに2026年8月7日の人事院勧告では、指定職俸給表について行政職10級と同程度の約3%の引上げを行い、8号俸を126万1,000円とすることが勧告されました。
126万1,000円は、2026年8月時点では「勧告額」
122万4,000円は2026年4月1日現在の現行俸給表の額です。一方、126万1,000円は2026年8月7日の人事院勧告で示された改定後の額であり、記事作成時点では現行額と同じ扱いにはできません。人事院は改定を2026年4月に遡って実施するよう勧告しています。
8号俸は何がすごい?給与上でも最高クラス
指定職俸給表は、2026年4月時点で次の8段階です。
| 号俸 | 俸給月額 |
|---|---|
| 8号俸 | 122万4,000円 |
| 7号俸 | 115万3,000円 |
| 6号俸 | 107万8,000円 |
| 5号俸 | 100万6,000円 |
| 4号俸 | 93万3,000円 |
| 3号俸 | 85万2,000円 |
| 2号俸 | 79万4,000円 |
| 1号俸 | 73万6,000円 |
重要なのは、「指定職なら全員122万4,000円」ではないことです。指定職の中でも官職ごとに号俸が定められ、責任の重いポストほど高い号俸が設定されます。
事務次官はその最上位に当たる8号俸の代表的な官職です。そのため、単に肩書だけではなく、給与制度上の格付けを見ても国家公務員の最高層に位置すると考えられます。
どうすれば事務次官になれる?出世コースのモデルケース
事務次官になるための「事務次官試験」があるわけではありません。国家公務員として採用された後、長期間にわたって複数のポストを経験し、幹部へ昇進していくことになります。
特に中央省庁では総合職採用者が幹部候補として経験を積むケースが多く見られますが、「総合職に合格すれば事務次官まで自動的に昇進できる」という制度ではありません。幹部職員については、内閣人事局による幹部人事の一元管理も行われています。
かなり単純化したモデルケースでは、次のようなイメージです。
| 段階 | 役職の例 | 主な立場 |
|---|---|---|
| 採用 | 係員 | 政策・行政実務の担当者 |
| 若手・中堅 | 係長 | 担当業務を取りまとめる |
| 中堅 | 課長補佐 | 課の政策実務の中心 |
| 管理職 | 課長 | 課を統括 |
| 幹部 | 審議官・部長など | 重要政策を横断的に担当 |
| 最高幹部 | 局長・官房長など | 主要部門を統括 |
| 事務方トップ | 事務次官 | 省全体の行政実務を統括 |
これはあくまでモデルケースです。実際には省庁によって役職体系が異なり、出向、地方勤務、他省庁勤務、官邸勤務などを挟む場合もあります。また、局長級まで昇進した職員の中からさらに事務次官が選ばれるため、採用者全体から見れば極めて限られたポストです。
大臣と事務次官は何が違う?
大臣と事務次官は、どちらも省庁の重要人物ですが、役割が根本的に異なります。
| 比較 | 大臣 | 事務次官 |
|---|---|---|
| 立場 | 政治家・国務大臣 | 国家公務員・官僚 |
| 省内での位置 | 省の長 | 事務方トップ |
| 主な役割 | 政治判断・政策決定 | 行政実務の統括・大臣補佐 |
| 局長との関係 | 省の長として統括 | 事務方トップとして各部局を監督 |
そのため、「事務次官は大臣の次だから、大臣が交代すれば必ず事務次官も交代する」という単純な関係でもありません。政治を担う大臣と、行政組織を担う官僚では、人事や役割の仕組みが異なります。
地方公務員にも事務次官はいる?
一般的な都道府県庁や市役所には、国の省庁と同じ意味での「事務次官」は通常置かれていません。
都道府県なら知事・副知事、市区町村なら市長・副市長などがあり、その下に部長、局長、課長などの行政職員が配置されます。
つまり「公務員の事務次官」と検索した場合、基本的には霞が関を中心とする国家公務員の最高幹部についての話だと考えるのが適切です。
結局、事務次官をどう見ればいい?
事務次官を理解するときは、「大臣の次に偉い役職」とだけ覚えるより、官僚組織の最終到達点となる事務方トップと捉える方が実態に近くなります。
法律上も各省に1人しか置かれず、省全体の事務を整理し、各部局・機関を監督する役割が明記されています。給与面でも、2026年4月時点で最高クラスの指定職8号俸、月122万4,000円が基準となっています。
一方で、省の長そのものは大臣です。「政治のトップ=大臣」「行政実務を担う官僚のトップ=事務次官」という2つの軸に分けると、ニュースで省庁人事を見るときにも役職の意味が分かりやすくなります。
FAQ
事務次官は官僚で一番偉いのですか?
大臣と事務次官はどちらが上ですか?
事務次官は何人いるのですか?
事務次官の月給はいくらですか?
地方公務員にも事務次官はありますか?
出典・作成方針
- e-Gov法令検索「国家行政組織法」第18条(事務次官の設置・職務)
- e-Gov法令検索「内閣府設置法」第15条(内閣府事務次官)
- e-Gov法令検索「復興庁設置法」第11条(復興庁事務次官)
- 人事院「国家公務員の給与制度(令和8年4月1日現在)」指定職俸給表
- 人事院「令和8年人事院勧告」および給与勧告資料
- 内閣官房内閣人事局「幹部職員人事の一元管理」
給与額は2026年8月14日時点で確認できる公的資料を基準に整理しています。2026年人事院勧告による126万1,000円は改定後の勧告額であり、2026年4月1日時点の現行俸給月額122万4,000円とは区別して記載しています。役職の序列については、法令上の職務と一般的な省庁組織の位置づけをもとに整理しており、省庁ごとの個別の官職構成には差があります。



