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事務次官になるための専用試験はありません。典型的なルートは、国家公務員として本府省に入り、課長補佐、課長、審議官、局長・官房長などを経て、最後に事務次官へ任用される形です。
ただし、「総合職試験に合格すれば事務次官候補になる」「官房長まで行けば次は事務次官」といった単純な仕組みでもありません。国家行政組織法上、各省には事務次官が1人置かれ、大臣を助け、省務を整理し、各部局・機関の事務を監督します。局長級まで残った幹部の中から、さらに事務次官が選ばれます。
実際の2026年の人事を見ても、財務省は主計局長、厚生労働省は職業安定局長、国土交通省は国土交通審議官から事務次官が出ています。最後の1ポストまで含めた「一本道の出世コース」があるわけではありません。
この記事のポイント
事務次官になるまでのルートは「総合職→本省幹部→局長級→次官」が基本
中央省庁の事務系職員をモデルにすると、事務次官までのキャリアは次のように考えると分かりやすいでしょう。年齢は昇進条件ではなく、あくまでキャリアの流れを見るためのモデルケースです。
| 時期の目安 | 主な役職・経験 | 次官までの意味 |
|---|---|---|
| 20代 | 係員・係長級、本省勤務、地方・他機関勤務など | 政策実務の基礎を身につける |
| 30代 | 係長・課長補佐級、他省庁や自治体への出向など | 担当分野の実務を取りまとめる立場へ |
| 40代 | 課長補佐、企画官・室長、本省課長級 | 政策判断や組織運営を担う管理職へ |
| 50代前半 | 本省課長、審議官、部長級など | 省内の主要ポストを経験する幹部層へ |
| 50代 | 局長、官房長、省名審議官など | 事務次官候補となり得る最上位層 |
| 最終段階 | 事務次官 | 各省1人の事務方トップ |
人事院の給与モデルでも、本府省の22歳総合職係員、35歳課長補佐、50歳課長という段階が例示されています。実際の昇進速度は省庁、採用年次、職種、人事評価などで変わるため、「50歳なら課長になれる」といった年齢表として読むものではありません。
事務次官だけを目指して途中の役職を一つずつクリアする仕組みではありません。まず本省課長級まで昇進し、さらに審議官や局長級として重要政策を任される。その中から次の幹部人事が決まっていきます。
事務次官を目指すなら総合職試験が最も典型的な入口
大学生が将来の事務次官を目指す場合、最も典型的なのは国家公務員採用総合職試験を受け、中央省庁に採用されるルートです。
総合職は、本府省で政策の企画・立案を担う職員の代表的な採用区分です。若手のうちから法令、予算、国会対応、省庁間調整などを経験し、将来の管理職・幹部候補としてキャリアを積む職員が多いため、事務次官までのルートを考えるならまずここが入口になります。
総合職でなければ事務次官になれない、という法令上の決まりはない
事務次官という官職に「総合職試験合格者であること」という資格要件が置かれているわけではありません。国家公務員の人事管理では、採用年次や採用区分にとらわれず、能力・実績に応じて任用する考え方が示されています。「制度上可能か」と「典型的な実際のキャリア」は分けて考える必要があります。
一般職試験から採用された職員についても、制度上「事務次官になれない」と決められているわけではありません。ただ、現在の中央省庁で事務次官まで進む代表的なキャリアを考えるなら、本府省の総合職採用から長期間にわたり幹部候補として経験を積むルートが中心です。
次官候補に残るには「一つの仕事が得意」だけでは足りない
事務次官は、特定の局や制度だけを見る役職ではありません。省全体の事務を整理し、複数の局や機関を監督する立場です。そのため、若手時代の専門性だけでなく、昇進するにつれて担当範囲を広げていく必要があります。
本省の中枢ポストを経験する
法令改正、予算、国会対応、重要政策の企画など、本省の中心的な業務をどこまで経験してきたかは重要です。課長補佐の段階では自分の担当を動かす力が中心ですが、課長になると課全体、局長になると複数の課を含む政策分野全体を見ることになります。
省内だけでなく、省外との調整を経験する
重要政策は一つの省だけで完結しません。内閣官房、内閣府、他省庁、地方自治体、国際機関などへの出向もキャリアの一部です。「本省から外に出たら出世コースから外れた」とは限らず、むしろ幹部候補として行政を広く見る経験になる場合があります。
課長以降は「自分で処理する力」より「組織を動かす力」が重くなる
若手のうちは正確な資料作成や制度理解が重要ですが、管理職になるほど、人を配置する、複数案から方針を決める、関係者の利害を調整する、問題が起きたときに責任を持って判断するといった能力が問われます。
事務次官は最終的に大臣を補佐して省全体をまとめるため、局長級までに「一つの分野の専門家」から「省全体を任せられる幹部」へ役割を変えられるかが大きな分岐点になります。
2026年の実例を見ると「官房長→事務次官」だけではない
事務次官の直前ポストを見ると、各省でルートが違うことがよく分かります。2026年夏の主な人事では、次のようになっています。
| 省庁 | 事務次官になる直前のポスト | 発令 |
|---|---|---|
| 財務省 | 主計局長 | 2026年8月7日 |
| 厚生労働省 | 職業安定局長 | 2026年8月4日 |
| 国土交通省 | 国土交通審議官 | 2026年8月7日 |
3省だけを見ても、主計局長、職業安定局長、国土交通審議官と直前の肩書は異なります。官房長は有力な幹部ポストですが、「官房長になった人が自動的に次官になる」というルールはありません。
省庁によっては、特に重要な局長、省名を冠した審議官、官房長などが次官候補となりやすい傾向があります。どのポストが重いかは組織ごとに違うため、「役職名」だけでなく、その省の実際の幹部人事を数年分見ると出世ルートが見えやすくなります。
最後は「昇進試験」ではなく幹部人事として選ばれる
事務次官は国家公務員法上の「幹部職」に含まれます。幹部職への任用では、適格性審査を経て作成される幹部候補者名簿や人事評価を踏まえ、任命しようとする官職への適性が判断されます。さらに、任命権者は幹部人事を行う際、あらかじめ内閣総理大臣と内閣官房長官に協議する仕組みになっています。
内閣人事局は、この仕組みを「幹部職員人事の一元管理」として担当しています。事務次官への任用は、一つの省の中だけで完結する通常の昇進人事とは性格が異なります。
「次官になるために必要な資格を取る」というより、長年の人事評価と職務経験を積み上げ、局長級まで昇進したうえで、最終的な幹部人事の候補に残るという理解が実態に近いでしょう。
技官でも事務次官になれる
「事務次官」という名称から、事務系職員しかなれないようにも見えますが、技術系職員が事務次官に就く例もあります。
国土交通省では2024年、技術系の最高幹部ポストである技監から吉岡幹夫氏が国土交通事務次官に就任しました。吉岡氏は北陸地方整備局長、道路局長、技監などを歴任しています。技術系でも、省全体を統括できる経験と実績を積めば事務次官への道があることを示す実例です。
一方で、技官が次官になる頻度やキャリアは省庁によってかなり異なります。技術職が多い省庁と、事務系職員が幹部の中心となる省庁を同じように見ることはできません。
大学生の段階では「どの大学か」より、まず採用試験と官庁選びを見る
事務次官になりたい学生が最初に考えるべきなのは、「事務次官を多く出している大学に行けばよい」という話ではありません。事務次官という官職そのものに、特定大学の卒業を求める制度はありません。
現実的には、国家公務員総合職試験を受け、官庁訪問を経て、自分が長期的に働きたい府省に採用されることが第一段階です。その後の人事は20年、30年という単位で続きます。採用時点の試験順位だけで最終ポストまで決まるものでもありません。
むしろ長期的には、どの政策分野を担当してきたか、どのような難しい案件を任されたか、管理職として組織を動かせたかといった実績が積み重なっていきます。
事務次官まで到達すると給与も国家公務員の最高水準
2026年4月1日現在の指定職俸給表は1号俸から8号俸まであり、8号俸は月額122万4,000円です。事務次官は、この指定職8号俸の代表的な官職です。
人事院が2026年4月時点の給与制度で示す参考モデルでは、事務次官のモデル年間給与は約2,524万円です。勤務成績が良好(標準)の場合のモデル額であり、税金や共済掛金を差し引いた手取り額ではありません。
なお、2026年8月7日には新たな人事院勧告が出ています。人事院の給与制度ページでも、令和8年人事院勧告の内容は後日反映予定とされているため、ここでは2026年4月1日現在の俸給額と、同時点のモデル給与を掲載しています。
結局、事務次官になるには何が必要なのか
最も典型的な答えは、「国家公務員総合職として中央省庁に入り、本省課長、審議官、局長・官房長級まで昇進し、その後の幹部人事で選ばれる」です。
ただし、総合職という肩書だけで決まるわけではありません。途中では政策立案、国会対応、予算、省庁間調整、出向、組織マネジメントなど多様な経験が求められます。局長級まで昇進しても事務次官は各省1人なので、そこからさらに選抜があります。
検索すると「東大」「財務省」「官房長」といった分かりやすい言葉が目立ちますが、制度として見るなら、特定大学や特定ポストが次官就任を保証する仕組みではありません。見るべきなのは、採用から数十年にわたってどのような役職と仕事を経験し、最終的に省全体を任せられる幹部まで到達したかです。
FAQ
事務次官になるまで何年くらいかかりますか?
民間企業からいきなり事務次官になることはできますか?
出典・作成方針
- e-Gov法令検索「国家行政組織法」第18条。各省に事務次官1人を置くこと、事務次官の職務を確認。
- e-Gov法令検索「国家公務員法」。幹部職員、適格性審査、幹部候補者名簿、幹部職への任用、内閣総理大臣・内閣官房長官との協議に関する規定を確認。
- 内閣官房・内閣人事局「幹部職員人事の一元管理」、「能力・実績主義の人事管理」。幹部人事と採用年次・採用試験の種類にとらわれない人事管理の考え方を確認。
- 人事院「人事院勧告」、「国家公務員の給与制度の概要」。2026年4月1日現在の指定職俸給表8号俸122万4,000円、事務次官のモデル年間給与約2,524万円などを確認。
- 財務省「人事異動」、厚生労働省「令和8年7月31日大臣会見概要」、国土交通省「人事異動 令和8年度」。2026年の事務次官就任直前のポストと発令日を確認。
- 国土交通省「斉藤大臣会見要旨(2024年6月25日)」。吉岡幹夫技監の国土交通事務次官就任と、北陸地方整備局長・道路局長などの経歴を確認。
役職の年齢や昇進時期は法令で定められたものではないため、本文の年齢別キャリアは制度資料や一般的な役職段階をもとにしたモデルケースとして記載しています。個々の府省、職種、採用年次によって実際の人事は異なります。



