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役職定年になると、課長や部長は具体的にどのポストへ移るのでしょうか。制度の名前だけを見ると「一つ下の役職に下がる」と考えがちですが、実際の仕組みは少し違います。
国家公務員の場合、原則60歳の役職定年年齢に達した管理監督職は、最初の4月1日までに管理監督職ではない官職へ降任、または降給を伴う転任をするのが基本です。人事院は、その降任先について「非管理監督職の中で、できる限り上位の職制上の段階」としています。つまり、「課長なら必ず課長補佐」という固定ルートではありません。なお、本人の年齢より高い勤務上限年齢が設定された管理監督職への異動など、制度上の例外もあります。
一方で、制度設計時には課長補佐級や専門スタッフ職などが具体的な受け皿として想定されており、内閣人事局の管理職向け教材には「次長だった職員が役職定年で課長補佐になる」というケースも登場します。肩書だけを見ると、かなり大きく下がる場合もあります。
この記事のポイント
役職定年の降任先は「非管理監督職」が基本
まず押さえておきたいのは、役職定年が単なる「役職を一段下げる制度」ではないことです。
国家公務員法上の管理監督職には、指定職のほか、俸給の特別調整額、いわゆる管理職手当の対象となる官職などが含まれます。こうした管理監督職に就いている職員が役職定年年齢に達すると、原則として管理監督職ではないポストへ移ります。
したがって、たとえば「部長から課長」「課長から室長」のように肩書が下がったとしても、異動先が同じ勤務上限年齢の管理監督職なら、それだけでは通常の役職定年処理にはなりません。
重要なのは肩書の文字ではなく、異動後の官職が管理監督職かどうか、管理監督職なら勤務上限年齢が何歳かです。
60歳になった瞬間に降任するわけではない
一般的な国家公務員の管理監督職勤務上限年齢は60歳です。ただし、60歳の誕生日を迎えたその日に必ず役職を降りるわけではありません。
制度上は、60歳に達した後、最初の4月1日までが「異動期間」とされています。この期間内に非管理監督職へ降任等を行います。人事院の2026年4月版FAQでも、原則として61歳となる年度の4月1日を超えて管理監督職として勤務することはできないと説明されています。
| 時点 | モデルケース |
|---|---|
| 2026年9月 | 課長が60歳の誕生日を迎える |
| 2026年9月〜2027年4月1日 | 役職定年に伴う異動期間 |
| 2027年4月1日まで | 原則として非管理監督職へ降任等 |
| 2027年度以降 | 定年前の常勤職員として非管理監督職で勤務することが可能 |
実際の異動日は各府省の人事運用によります。年度途中で異動する場合もあれば、定期人事に合わせて4月1日に役職を降りる場合も考えられます。「60歳の誕生日=その日に課長を外れる」と覚えると少しずれます。
降任先は3つの基準で決められる
では、人事当局は何を基準に降任先を決めるのでしょうか。人事院規則11―11では、大きく3つの考え方が示されています。
| 基準 | 内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 能力・適性 | 人事評価、勤務状況、職務経験などから、その官職を遂行できること | 単純に年齢だけでポストを割り当てるわけではない |
| できる限り上位 | 人事計画などを考慮し、非管理監督職の中でできる限り上位の職制上の段階とする | 能力に見合う範囲で、極端に低いポストを避ける考え方 |
| 逆転の防止 | 上位の管理監督職員と同時に役職定年となる場合、原則として元の上下関係が逆転しないようにする | 元部長より元課長の方が上位ポストに配置される、といった逆転を防ぐ |
ただし、「できる限り上位」という部分は重要です。必ず最上位の非管理監督職に配置しなければならないわけではありません。人事院も、降任先となる官職が不足している場合などには、最上位の段階にならないことがあると明記しています。
課長補佐級や専門スタッフ職は想定されている受け皿
役職定年制度が検討されていた段階から、人事院は降任先の例として課長補佐級や専門スタッフ職を挙げていました。内閣人事局の管理職向け教材にも、役職定年後の働き方を考えるケースとして「次長から課長補佐」が示されています。
ただし、官職名だけで役職定年後の位置づけを判断することはできません。同じ「専門官」「調査官」などの名称でも、府省や組織によって職制上の段階や管理監督職に当たるかどうかが異なる場合があります。
役職定年後の配置は、次のようなイメージで見ると分かりやすいでしょう。以下は制度を理解するためのモデルケースであり、すべての府省で同じ異動が行われるわけではありません。
| 役職定年前 | 降任後のイメージ | 見方 |
|---|---|---|
| 本府省の課長・室長級 | 課長補佐級、専門スタッフ職など | 管理監督職を外れ、実務・専門性を担う立場へ移る例 |
| 次長級 | 課長補佐級など | 内閣人事局の教材にも「次長→課長補佐」のモデルケースがある |
| より上位の管理監督職 | 組織内で確保できる上位の非管理監督職 | 肩書上は複数段階下がる可能性がある |
ここでいう「課長補佐級」は、単に昔の役職に近い肩書を用意するという意味ではありません。役職定年後の職員が持つ経験や専門性を活用しながら、管理監督職ではないポストで仕事を担うことが制度の前提です。
「次長から課長補佐」も制度上は十分あり得る
役職定年のインパクトが分かりやすいのが、内閣官房内閣人事局の「国家公務員のためのマネジメントテキスト」に掲載されたケースです。
そこでは、以前は「××局の次長」だったシニア職員が、役職定年によって課長補佐としてチームに加わる場面が示されています。若手職員から見ると元幹部が同じチームに入り、現在の管理職から見ると自分より以前は上位だった職員をマネジメントする形になります。
これは特定の実在職員の人事例ではなく、内閣人事局が管理職研修用に示したモデルケースです。ただ、「役職定年=一つ下の役職」という理解が正確ではないことをよく表しています。
「部長なら課長へ」は必ずしも成り立たない
部長から課長へ下がっても、異動後の課長が同じ勤務上限年齢の管理監督職であれば、それだけでは通常の役職定年処理にはなりません。原則として管理監督職から外れる必要があるため、肩書だけを見れば二段階、三段階下がったように見える配置もあり得ます。
役職定年後は「部下のいないベテラン職員」になることもある
役職定年前は、部下の人事評価、業務配分、意思決定などを担っていた職員でも、役職定年後はライン管理から外れることになります。
一方で、長年の職務経験まで失われるわけではありません。内閣人事局は、シニア職員についても経験や強みを踏まえて役割を与えることが必要だとしており、法令改正経験の豊富な元管理職が若手職員と一緒に業務を担当し、知識や調整ノウハウを引き継ぐ例を示しています。
したがって、役職定年後のポストは「管理職ではない=単純な補助業務」という意味ではありません。専門案件、後進育成、長期案件の支援、過去の経緯を踏まえた調整など、ベテランの経験を生かすスタッフ職として配置される余地があります。
実際に1,465人が役職定年で非管理監督職へ移った
役職定年制は2023年4月に導入されました。人事院の令和6年度年次報告書によると、制度導入後最初の世代にあたる、令和5年度中に役職定年年齢へ達した給与法適用職員のうち、令和6年4月1日までに非管理監督職へ降任等をした職員は1,465人でした。
| 区分 | 人数 |
|---|---|
| 非管理監督職へ降任等をした職員 | 1,465人 |
| 降任または降給を伴う転任 | 1,410人 |
| それ以外の非管理監督職への異動 | 55人 |
少なくとも制度導入後最初の対象世代では、1,000人を超える職員が非管理監督職へ移っています。役職定年は、ごく一部の幹部だけに起きる特殊な人事ではないことが分かります。
降任後の給与は「単純に元の70%」ではない
役職定年と一緒に語られることが多いのが、60歳以降の給与7割措置です。ただし、「役職を降りた瞬間に年収が一律30%減る」という仕組みではありません。
国家公務員では、当分の間、60歳に達した日後の最初の4月1日以後、俸給月額を原則7割水準とする措置があります。さらに役職定年で下位の官職へ移ると、役職変更による給与低下と7割措置が重なるため、一定の職員には「管理監督職勤務上限年齢調整額」が支給されます。
人事院は、この調整によって、役職定年前に管理監督職として受けていた俸給月額の7割水準を基本給として支給する仕組みを設けています。調整額は地域手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当などの算定基礎にも含まれます。
一方、管理職でなくなれば管理職向けの手当など勤務条件も変わります。このため、実際の年収や手取りまで「役職定年前のちょうど70%」になるとは限りません。7割という数字は、まず俸給制度上の措置として見る必要があります。
全員が60歳で必ず管理職を降りるわけではない
役職定年には例外もあります。
国家公務員法には、降任等によって業務遂行に重大な支障が生じる場合などに、一定期間、管理監督職として勤務を続けられる「特例任用」が設けられています。単に本人や所属長が「まだ管理職を続けてほしい」と希望するだけで自由に適用できる制度ではなく、法令上の要件に沿った例外措置です。
また、管理監督職勤務上限年齢そのものが60歳ではない官職もあります。現在の人事院規則では、事務次官やこれに準ずる一部の官職などについて62歳とされるなど、官職の特殊性に応じた別の年齢設定があります。
したがって、「国家公務員の管理職は例外なく60歳で役職を降りる」とまで言い切るのは正確ではありません。一般的な管理監督職は60歳が原則、と理解するのが適切です。
地方公務員も考え方は同じだが、降任先は自治体ごとに違う
地方公務員にも管理監督職勤務上限年齢制があります。地方公務員法では、管理職手当の対象となる職などを管理監督職とし、役職定年年齢に達した職員を非管理監督職などへ降任・転任する仕組みが定められています。
ただし、国家公務員と違い、具体的な管理監督職の範囲、勤務上限年齢、降任等の基準などは条例によって定められます。
地方公務員は自治体の条例・人事規則を確認
「部長から何になるか」「課長から何になるか」は自治体によって異なります。専門監、主幹、課長補佐などの職名が使われることもありますが、その職が非管理監督職に当たるかは自治体ごとに異なります。国家公務員の例をそのまま当てはめることはできません。
役職名より「どの職制上の段階か」を見る
役職定年後の人事を見るときは、肩書だけで「何段階下がった」と判断しない方が実態をつかみやすくなります。
見るポイントは、①異動先が非管理監督職か、②その組織でどの職制上の段階に位置するか、③本人の経験をどの業務で使うのか、の3点です。役職定年は、60歳になった職員を組織の外へ出す制度ではなく、定年前の常勤職員として勤務を続けながら、管理する側から実務・専門性を担う側へ役割を切り替える仕組みです。
FAQ
課長は役職定年になると必ず課長補佐になりますか?
役職定年後に、もう一度通常の管理監督職へ戻れますか?
地方公務員の「課長の降任先」はどう確認すればよいですか?
出典・作成方針
- 人事院「定年引上げ・再任用制度 FAQ」(令和8年4月)
- 人事院「管理監督職勤務上限年齢制(役職定年制)・特例任用」
- 人事院「令和6年度 年次報告書」
- 内閣官房内閣人事局「国家公務員のためのマネジメントテキスト 2024.4 ver.」
- 人事院「平成30年度 年次報告書」
- e-Gov法令検索「国家公務員法」「人事院規則11―11」
- e-Gov法令検索「地方公務員法」
2026年9月時点で確認できる制度・公表資料を基に作成しています。課長補佐級や専門スタッフ職などの記載は、すべての府省・自治体で同じ降任先になることを示すものではありません。モデルケースと制度上確定しているルールを分けて記載しています。



